生まれ育った町には蓮池が多かった。
幼い頃、蓮の茎の中身がどうしてか急に見たくなって辺に生えてる太めの茎を一本折った。
茎の表面は小さな突起でぶつぶつとしていて、折り曲げられた繊維からは白く濁ったどろりとした液体がゆっくりと時間をかけて溢れ出て、俺の小さな親指に垂れた。
それ以来、蓮というものは何だか気持ち悪くて得体の知れないものだというイメージがつきまとい、毎日見るそれを俺は半ば黙殺しながら過ごしていたのだった。
故郷を離れて十数年。
久しぶりに見た蓮池は風雨に晒され続けたせいか、ある種の憂いを帯びていて、老人がこぞって背中を丸めてひっそりと息をしているような、それは言い様のない侘しさを感じた。
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